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ゴールデンウィークのこんな過ごし方2

十数年前、約3年をかけて東海道五十三次の日本橋~京都三条大橋までを走破(歩破?)しました。
東海道は実は大阪まで続いているとのことで、これを東海道57次と言うのだそうです。今回残りの京都~大阪まで50キロを歩き切ろうとGWを利用して出かけていきました。
5月3日~6日まで、3泊4日をかけて難なく達成できるものと信じて出かけていきましたが、予期せぬ出来事が起こり、大幅な予定変更を余儀なくされてしまいました。
出発地点は京都から京阪電鉄で少し戻り、山科追分という所から始まります。連れは我が妹君。
当日は快晴で真夏日となり、歩くには少々きつい天候となりました。風情のある旧街道から時折幹線道路沿いを歩きながら、確実に十数年前より落ちた体力を実感していました。午後からのスタートで、本日の行程は行けるところまで行くをモットーに無理をせず進みます。途中強い日差しを日傘で遮りながら、間もなく京阪電鉄の藤森駅が前方に見えてくるころ、「菓寮伊藤軒」という甘味処がありました。ここが大変素晴らしい甘味処で、和菓子・洋菓子・煎餅・葛餅・お土産ものまでありとあらゆるお菓子がそろうところで、奥に創作洋菓子が頂けるカフェがあり、パテシエが腕を振るっていました。
美味しいお菓子と心地よい疲れでお尻に根っこが生えたかのように動けなくなりましたが、心を鬼にして出発しました。
すると、綿菓子を抱えた子供たちとすれ違います。藤ノ森神社の祭礼ということで参拝させていただきました。折しも連れの妹君の足が攣ってしまい、一休みが必要でした(さっき休んだばかりですが)。藤ノ森神社は、立派な神社で勝運・学問と馬の神社というではありませんか。「そういえば近くに京都競馬場があるよ」「いいね、何かやってる?」「あれ~、明日天皇賞GⅠのレースがあるよ・・・」藤ノ森神社に寄ってしまったのも何かの縁。ということで、あえなく予定変更し翌日は伏見観光の後に京都競馬場の天皇賞のレースを見に行くことになりました。難なく挫折です。
翌日は午前中まずインバウンドに人気の伏見稲荷大社へ。実は初めて訪れました。全国に3万社あるといわれているお稲荷さんの総本宮とのことで1300年の歴史があるそうです。例の朱色の鳥居が連なっている参道もさることながら、その脇の森や木々の織り成す自然が清々しい気分にさせてくれます。
次に徳川幕府発祥の地である伏見城へ。豊臣秀吉が築き、徳川家康が建て直した名城と言われています。家康はこの地で何人かの子供を成し、暫くの間政権を動かしていたとききます。京都、大阪から近い伏見は大事な要衝だったのでしょうね。しかし、家康亡き後三代将軍家光によって伏見城は廃城となったのです。現在天守閣は公開されていませんが、公園として一般に開放されており周辺は超高級住宅街です。その中に「稲盛」という表札の大豪邸を見つけてしまいました。あの「稲盛さん?」と頭を過りましたがたしかめるすべはありません。それでもご利益があるかもしれないと門前で写真をパチリ。大変失礼いたしました。
伏見は大変面白い所で、坂本龍馬が薩摩藩士に襲われた「寺田屋」もあり、黄桜の蔵元も。丁度お昼時に蔵元に着き、利き酒に手が伸び掛かりましたが、ここで飲んでしまってはこの先歩くことができないと五十三次の時の経験で知っていました。我慢我慢、と京街道(五十七次をそうよびます)へ戻り、感じのよさそうなお店を見つけて入りました。「料理屋しん谷」という日本料理屋で、食べログの評価もなかなかのお店でした。人気ナンバーワンの「玉手箱ランチ」を頂き、土鍋で炊いたおこげ付きご飯をいただいていると妹君のお茶碗に何やら硬いものが紛れておりました。お店のかたも異物混入とあっては一大事ですから、何だろうと皆で頭を突き合わせておりましたところ、どうやら妹君の銀歯が欠けて出てきた模様です。(汗)本当にお店の方には申し訳ないことをいたしました。平身低頭謝り倒して店を出て中書島駅へ向かって歩いておりましたら、後ろから「しん谷」の大将が追いかけてきました。どうしたことかと思いきや、ハンカチを忘れて、それを走ってお届けくださったというわけです。これまた本当に申し訳なくて、感謝感謝でお礼を申し上げたところです。近いうちに必ずや菓子折り持参でお伺いいたしますから、大将・おかみさん、ごちそうさまでした!!
中書島駅から淀駅へ向かい、午後2時に京都競馬場に着きました。
地上6階建ての近代的な建築物で広々とした芝生のターフが続いています。お天気も良く最高のコンディションでした。
昔のように競馬新聞片手に赤鉛筆を耳に挟んだ予想屋のような人は見当たらず、情報はすべてスマホの中に。若いカップルや親子連れが多いのには驚きました。
出走馬のなかにショウナン○○○○という名前を見かけ、武豊さんが騎乗するというので、この馬に掛けてみようということになりましたが、馬券の買い方がわかりません。入学試験の時のようなマークシートにマークして自動販売機にかけるのですが、「UMACA」という会員カードを持っていないと券売機の操作もできません。漸く現金対応の券売機を探し当てましたが,長蛇の列です。何とか馬券を購入してパドックでのんびり出走馬を眺めていた妹君と合流した時には出走数分前でした。メインスタンド前は人垣で前が全く見えません。誘導されるままに第4コーナーあたりの芝生席へ。そこは芝生にブルーシートを敷いてのどかに遊んでいる親子連れで一杯でした。こんな一角もあるのかと驚いていると、遠くのスタンド前でファンファーレが鳴り響き、大歓声が聞こえてきます。いよいよGⅠレースのスタートです。ワクワク・ドキドキしながら出走を待っていましたが、遠くの出走ゲートは見えません。「各馬一斉にスタート!」の実況中継があり、ゴール前の大きなモニターを観ながら馬たちの軍団を待ちます。「あ~、見えてきました!」第3コーナーから第4コーナーにかけてお腹に響くよう足音が近づいてきます。本当にすぐ目の前を一団が通過していきます。子供たちの「がんばれ~」の黄色い声と拍手。まるで運動会を応援しているようです。天皇賞は距離が長く、2周するそうで、もう一度目の前を通るはずです。向こう正面は全く見えません。暫く待っていると再び見えてきました。今度は観客も馬たちも必死さが違いました。第4コーナーを回るとき、何と武さんのショウナン○○○○が先頭に立とうかという勢いでした。「いけえ~!武え~!」と観客も盛り上げっています。もしや、勝ってしまう⁈と期待していましたが、今一つ伸び悩み、優勝は本命馬の「なんちゃら」でした。しかし、ショウナン○○○○は頑張って3着に入り、元が取れるくらいの配当金をもたらしてくれました。
たった1レースだけの観戦でしたが、十分に楽しませてもらいました。この上無く楽しかったです。
さて、3日目です。すっかり歩く気力が失せてしまっています。
折しも万博にあわせて、京都・奈良・大阪の3都市で、国宝展を同時開催しているとの情報が入りました。やみくもにウォーキングでエネルギーを使うより、滅多に見られない国宝を鑑賞する方が意義があると、国宝展巡りをすることに予定変更しました。
まず、奈良からです。「超、国宝」と題して国宝を超える国宝が展示されているとのことです。奈良駅から鹿がくつろぐ公園を突っ切って奈良国立博物館へ。法隆寺蔵の観音菩薩立像(百済観音)は7世紀の木造の観音様で、20世紀初頭のパリ万博で絶賛されたとのこと。身につけている装飾品の細部にわたる精巧な作りが素晴らしいとの評価だったようです。また中宮寺蔵の菩薩半跏像は8世紀の木造ですが、保存状態もよく、大変きれいなお顔で、本来仏像は男性と考えられているそうなのですが女性ではないかとおもえるほど端正なお顔立ちです。実際過去にはつい抱きついてしまった人がいたとかいなかったとか。
名物の「柿の葉寿司」の老舗で遅い昼食をとり(こちらもインバウンドばかり)、近鉄奈良駅へ向かう道すがら、鹿革細工のお店で引っかかってしまいました。妹君はかねてよりショルダーバックを探しており、気に入ったものを見つけて購入しました。私も正倉院の鳳凰柄の長財布を人生最後の財布と位置づけて購入しました。鹿革細工はふるさと納税の返礼品としても扱っているそうで、興味のある方は検索してみては?
夜は大阪へ戻り、「吉本新喜劇」を見ようと予約サイトにアクセスしたところ、近鉄が止まってしまいました。前を走る特急電車の車両故障とのことで数十分立ち往生。最寄りの駅に降ろされてしまいました。吉本新喜劇の観覧は諦めて、ホテルに帰りました。
翌日は連休最終日。朝から土砂降りの雨。それもかなり雨脚が強いようです。
東海道を歩くのはさっさと諦めて、午前中は大阪城へ行きました。実は初めて行きます。
土砂降りの大阪城にはインバウンドばかりですが、外人のガイドさんの知識が素晴らしく感心してしまいました。そしてその話をインバウンドの皆さん本当に熱心に聞いていたのは印象的でした。
「SHOGUN」という真田広之さんの作った映画がグラミー賞をいただいていたようですが、戦国時代の日本はミステリアスなのかもしれませんね。
大阪城で驚くのは、石垣の大きさです。人の背丈の2〜3倍ほどあろうかという大きさで、さすが豊臣の権勢たるやすごいと思いきや、この石垣は徳川によって作られたものだそうです。
伏見城にしろ、大阪城にしろ、徳川はことごとく豊臣の財を上書きしていったようです。
家康さん、秀吉さんのことがきらいだったのでしょうね。
午後は大阪開催の国宝展へ。教科書にも載っていた「漢奴倭国王」の金印、薬師寺東塔の屋根の天辺の水煙など1500〜2000年近く前の国宝がどっさり。お腹いっぱいになって夕方、大阪を離れました。
さて、連休前に立てた50キロを歩くという計画は水泡に帰すことになってしまいましたが、今回のこのいきあたりばったりの旅のたのしかったこと。天皇賞、国宝展、行けなかったけど吉本新喜劇、グルメなどいずれも予約によってスムーズに動くことができ、スマホのおかげでしょうか。そしてどこへ行っても楽しめたというのは日本の文化発祥の地、関西だったからでしょうか。
東海道の残り40キロをいつ歩こうかと、次なる旅への思いを巡らしながら、ゴールデンウィークが終わってしまいました。
皆さんはいかがお過ごしでしたか?